2009年7月21日火曜日

Little Essay 00028 「スパイ2」






仕事仲間のスパイWが 新情報を持ってきた


「あの店が流行っている訳がわかったんだ!」

彼はあたりを気にしながら 

そっと小声で言った


そして

「この情報は高いぜ!」と続けた…



「いくら?」ボクは聞いた


「生ビール3杯!」スパイW はニヤリとした


「OK!」


ボクはバーテンに生ビールを注文した



「実はあの店には 不思議カクテルがあるんだ

 一度飲んだら とりこになるってやつさ!」


スパイは一杯目の生ビールを一気に飲んだ



そして空いたグラスを強く握りしめながら


「オレの彼女もイカレちまった!」


と静かに付け加えた




Little Essay by Yasutomo Honna


2009年7月19日日曜日

Little Essay 00027 「スパイ」




「ところでいつも聞きたいと思ってたんですが

 あなたの仕事は何なのですか?」


彼女は不思議そうな顔をして聞いてきた…



「そんな事知らなくたっていいじゃないですか

 今が楽しければそれでいいんですからね


ボクはそう言ってビールグラスを持ち上げた



「でも どうしても聞きたいわ 

 誰にも言わないから ねっ オネガイ…」


彼女は目を輝かせて聞いてきた





「じゃ 誰にも言わないでくださいよ

 ふふふ 実は私は <スパイ> なんです…」


「えっ?スパイ?何のスパイなんですか?」


彼女は驚いて聞き返してきた



「それは言えません スパイなのですから


驚いている彼女を横に 

ボクは残っていたビールを飲み干した





Little Essay By Yasutomo Honna






誰もいない…読者0人

誰もいない…
誰も読まない…
誰も存在すら知らない…

しかし、その不気味な壁の向こう側には
きっといずれ出会うことがあるだろう
素敵な人たちが通り過ぎている…
そんな予感がしてたまらないのです。


誰もいない…
誰も読まない…
誰も存在すら知らない…

確かに見知らぬ道行く人たちに
突然挨拶する人はいませんし
きっとそんな確率は天文学的数字
いや…ナンパは別か…あはは。


誰もいない…
誰も読まない…
誰も存在すら知らない…

しかし それでもゆっくりと書き続けて
誰か一人でも どこかで読んでくれていて
楽しみにしていてくれたら それでいい。


誰もいない…
誰も読まない…
誰も存在すら知らない…

リトルエッセイ
嘘かも知れない 本当の話
本当かもしれない夢物語…

一瞬にして通り過ぎてしまう小さな話を
どう切り取るか…
他愛もない 小さな話を どう感じるか…


誰もいない…
誰も読まない…
誰も存在すら知らない…

この小さなスペースは ボクの原稿用紙


もし…
星の数程あるブログの中から
このリトルエッセイを見つけてくれたら
そして いつかどこかでお会いできたら…

あなたの話を 
いずれここでご紹介したいと思います…



Little Essay yasutomo Honna




Little Essay 00026 「デート」






「どこかに連れてって

日曜の昼下がり彼女から電話があった


「それはデートの誘いかい?」

ボクはけだるい声で聞いた


「デートじゃないわよ!ドライブの誘いよ!」

彼女は少しふくれたような声で言い返した


「わかった わかったよ!

 じゃ何処に行きたいんだい?」


「そんな事 私に聞かないでよ!

 コースは男が決めるものでしょ…」


彼女はまたふくれたように続けた



「じゃボクが決めていいんだね… 

 それなら海に行って 最後はホテルだ!」


ボクは少しふざけて言った


少しだけ時間が止まって


「あなたって最低ね


そう言って彼女は電話を切ってしまった




ヤレヤレ… 


今日は違う女性とデートの日なんだよね




Little Essay  by Yasutomo Honna



2009年7月17日金曜日

Little Essay 00025 「ア イ シ テ ル」




不思議なくらい 早く時間が流れていきました


「少し じっとしていてくれないか


ボクは自分の時計に話しかけたけれど


ボクの時計も この店の時計も知らぬ顔


君は静かに


ボクが頼んだカクテルを口に運んでいます



君が12時のシンデレラになってしまう前に


ボクはたった一言の言葉を言いたいのです


「     」と たった一言


君に聞こえるでしょうか




Little Essay by Yasutomo Honna





2009年7月16日木曜日

Little Essay 00024 「スタンディングバー」






六本木のワンダーバーで
久しぶりの女友達Yと会った

ハウスワインを口に運ぶ彼女は
いかにも都会っ子だ…

この店も
キャッシュオンデリバリー
スタンディングバーでは
なかなか洒落ている


「待った?」
少し遅れたボクは聞いた

「ウン 待ったよ!」
彼女はポロッと言う

歯切れのいい会話は
結構男心を くすぐるものだ


彼女は飲む時も
必ずスケッチブックを抱えている
決してテーブルに置かない

そしていつもワインを飲んでいる…


狭いスタンドバーで
肘を突合せながら
二人でいつものように
六本木の夜を楽しんでいると

肘と肘の接点から 
熱いものが 静かにこみ上げてきた…




Little Essay by Yasutomo Honna



2009年7月14日火曜日

Little Essay 00023 「あるBARの風景」





ボクがグラスを持ち上げた瞬間

キミは席を立った…


当然そうなると思っていたから

ボクはそのままグラスを口に運んだ


グラスの氷がカリンと音をたてて 

ウィスキーを揺らし

少しだけ静かに時が止まった…


キミはしばらくの間

ボクを見つめていたようだが

最後に フッ と笑ったような気がした



足音がグラスの向こう側に

静かに消えて行くのを

ボクは目を閉じながら 

ゆっくりゆっくり聞いていた…



Little Essay by Yasutomo Honna





2009年7月12日日曜日

Little Essay 00022 「ダンス オブ ワイン」






暗い部屋に静かに差し込む日の光の終点には

飲み残したワイングラスがあった


ベットから首だけを出し

そんな風景を見つめていると

昨日の夜が嘘のように思えてくる



ワインラックから

一本のワインを取り出して栓を抜いた…



するとワインボトルの中から

美しい女性が飛び出してきたんだ…


彼女は部屋中を滑るように踊りだし 

そしてボクの手をとった


からきし踊りが苦手なはずなのに

彼女のリードはまさに素晴らしかった



踊ってはワインを飲み 

飲んではまた踊った…


ふらふらになっている筈なのに 

いつまでも踊り続けられた


で またワインを飲む





彼女が寂しそうな目をしたのは

最後のワインがグラスに注がれた時だった

そして静かにふっと…

ボクの目の前からいなくなってしまった



ボクは最後の注がれた

飲みかけのワインに手をつける事なく

彼女を捜し続け 捜し続け 

そしていつの間にか…

疲れ果て 眠ってしまったらしい



明くる朝

朦朧としたベットの上から

昨夜の記憶を辿ってみたのだが…


テーブルの上に残されたワインボトルには

不思議なことに 

一輪の花が飾られていた…


その花びらは…

昨夜のワインの如く

深く情熱的な…エンジ色をしていた



Little Essay by Yasutomo Hinna



2009年7月10日金曜日

Little Essay 00021 「一杯のスカッチ 」






時折 思い出すのは

何も考えないで 

ひたすら飲んで 時間を過ごしていた頃のこと


酒の銘柄もウンチクも 何もない

ただ飲んで楽しめていた頃のこと


それが安酒であろうが 無名酒であろうが

側に気のあった友がいて

つかみきれない未来を語り

落しどころのない討論をし

そして 恋愛に悩む

そんな日々が楽しかった



いつしか 何人かの友は

カラオケという道に走り

何人かの友は結婚して

外へ足を向けなくなって行った


恋愛に悩んだ友は

女性のいる酒場に逃げ

極度に飲みすぎた友は

医者と友達になっていった




小さなカウンターバーに座って

バーマスに旨い酒を尋ねてみる

十数年もののスカッチを

すすめられるがまま

飲んでみる



しかし

何も考えないと思えば思うほど

過ぎ去った過去が

走馬燈のように流れては消え

消えては流れていく



喧嘩した友の怒った顔

初めて任された仕事でミスった夜

好きになった女性を 初めてデートに誘えた日

ウソをまたウソで固めなければならなかった

切ない…言い訳



グラスの中の琥珀色の液体と

遠く懐かしい思い出は

妙に相性がいいらしい



<酒と思い出>がだぶってきたら

それはいい年齢になってきた証拠

と 何処かで誰かから聞いたことがあるけれど

自分がいざ体験してみると

なるほど…

まさしくそうなのかも知れないと思ってしまう




一杯で終わるつもりが

二杯 三杯となってしまうのは

思い出の続きを見たいがためなのかもしれない



青春と呼ばれたあの頃は

もう二度とは戻って来ないけれど

いつでもあの頃を思い返す方法を

この年齢になってやっと手に入れることができた


小さなグラス一杯のスカッチと

数十秒間目をつむることによって




Little Essay by Yasutomo Honna