その湖のほとりの 小さな空き地に
忘れ去られたようなブランコが
ひとつだけ ぽつんとあった
その空間は確かにサビついていた…
「こうして湖に向かって
ブランコをこいでいると
何か二人 不思議な世界にいるようね…」
キミはボクとのデートに
いつもここをリクエストした
そして ブランコをこぎながら
決まりきったようにそう言った
誰もいない 静かな空間に
<キーコ キーコ キーコ…> と
サビついたブランコの音だけが
静かに鳴り響いていた
で ボクはいつもそんなキミを見ながら
タバコを吸って時間をつぶす
「このブランコは
いつまでここにあるのかしら?」
キーコ キーコと言う音が止まると
キミはボクに聞いてきた
「きっとキミが
デートコースを変えないうちは
残ってるだろうね」
ボクはそう答えて笑った…
「そっかぁ…
じゃいつまでも残ってるわね…あははっ」
そしてまた再び キーコ キーコ…
その後 キミはボクと違う男性と結婚した…
キチンとした
お互いの理由があった訳でもないのだが
<長い時間>という歪みが
その原因だったのかもしれない
そして それは突然に訪れた…
それからしばらくして
湖のほとりの小さな空き地は整備され
きれいな緑の公園になってしまった
当然あのブランコも消え
サビついた思い出もなくなってしまった…
Little Essay by Yasutomo Honna
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