そのプラモデル屋が
無くなったのは突然だった…
懐かしい風景として
いつまでも残っていると信じていたのに
ある日突然その店は無くなってしまった
日課の様に通いつめていた頃から
もう長い時間が経ってしまい
二度と足を踏み入れない
置き去りの空間になっていたのだが
いざ無くなってしまうと…
心のどこかに風が吹き込んできた
ポケットに一円も入っていない時でも
ボクらに夢を与え続けてきてくれた
プラモデル屋
100円なんて大金が入ると
地球はすべて自分の物だ…
そんな気持ちでその店へ急ぎ足になった
サンダーバード2号は最高だった
潜水艦サプマリン号は風呂の友
戦車はジオラマの中にいた
ドラムセットやギターセットも
未来への憧れだった
自由になる金が少し入るようになると
何故か突然…
ボクらはプラモデルに
見向きもしなくなったんだ
不思議なもんだね…
しばらく空き家になった
その店舗を眺めていると
そんな風景が幾つも幾つも
脳裏を横切っていった…
Little Essay by Yasutomo Honna
※このプラモデルの話はノンフィクション
サンダーバード秘密基地のプラモデル、
実は私は手つかずの商品を今もこっそりと
隠し持っているのでした。