2009年6月22日月曜日

Little Essay 0001 「そういえば…こんなことがあった」


Little Essay 0001

■そういえば…そんなことがあった



年齢がある大台にのった いや のってしまった時に
ふと思い出したことがある…

この大台というラインを遠い昔に 
何気なく想像していた時のことだ

そう それは 地方都市で働いていた時のこと
そういえば…そんなことがあった

いつも通いなれた 小さな洒落たバーのカウンターで
バーマスと 静かに語り合っていた時

「今日は客が少ないね…」ボクは静かに彼に聞いた

「こんな日も たまにはありますよ」…
グラスを拭きながら彼はこたえる

「この店で一番古いウイスキーは何?」
続けてボクは聞いた

「1940年代のマッカランですかね… 
私のコレクションですが
きっと死ぬまで 飲めそうもないですよ…」 
手の中のグラスが キュッと鳴った

今から20年以上前の話だが 
今考えても その酒は
当時でも50年近くは経過していたのだ…

「飲むことはあるの?」

「いや 飲みたい気持ちはありますが 
いつ飲むかはわかりません…
死ぬまでに は 飲みたいと思いますが… 
現実 何時死ぬかが 解らない…」

そう言って 彼は空を見つめた

その時ボクは 自分がどんな年齢を重ねていくのだろうと
その小さなカウンターで 
バーマスを静かに見つめながら考えていた

10年後 20年後 そして大台にのった時
自分は どんな人生を過ごしているのだろうか? 
と夢巡らしていた

夢はあまりに朧げで そして非現実的だったから
静かに現実に引き戻されたが…
その日飲んだ安酒は 確かに前頭葉の毛細血管まで浸透し
ボクをしばらくの間 想像の世界で遊ばせてくれていた

そして 今 ボクは大台を確かにクリアして…
今度は 遠い昔を懐かしむ瞬間と
遠い未来を想像する… その狭間にいる

その両方を 静かに交差させる瞬間は
どんな旨いつまみよりも 優れている

また 今夜も 深酒をしそうだ…


Little Essay by Yasutomo Honna

1 件のコメント:

猫金 さんのコメント...

たまに読んでますにゃ

( ^^) _旦~~

ざぶた猫でした。