2009年8月20日木曜日

Little Essay 049「知らない町の風」






駅のキオスクで

ウイスキーのポケット瓶と

単行本を一冊買った

昔のサントリーの広告を真似てみたくなって

知らない町行き 各駅停車の切符も買った


昼間の各駅は案の定 空いていたし

前の席に足を十分伸ばせた…



単行本はキオスクで

一番最初に目をつけた本だった

名前すら聞いた事のない作家の

21世紀に日本はどうなる

そんな本だ



電車が走りはじめる

さすがに揺れるが 決して悪い気はしない

いや 程よく揺れてくれなければ

実際列車に乗った意味すらないのだ



ポケット瓶のネックにかぶさっていた

小さな透明プラスティックカップに

ウイスキーを零さぬよう注ぐ

ウイスキー瓶が カッブにカチカチと触れ

そしてカップの中で 琥珀色の液体が揺れる


程よく注がれたそれを目の前にかざし

琥珀色の液体越しに見える

流れる風景に乾杯をした…


不確実ではあるが…

左手には

21世紀の日本の将来を占う単行本

右手には

未来をぼやかし 心まで酔わす液体を手にし…


ボクの頭脳は

これからたどり着くであろう

知らない町の風を見抜こうとしていた



Little Essay by Yasutomo Honna




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