駅のキオスクで
ウイスキーのポケット瓶と
単行本を一冊買った
昔のサントリーの広告を真似てみたくなって
知らない町行き 各駅停車の切符も買った
昼間の各駅は案の定 空いていたし
前の席に足を十分伸ばせた…
単行本はキオスクで
一番最初に目をつけた本だった
名前すら聞いた事のない作家の
21世紀に日本はどうなる…
そんな本だ
電車が走りはじめる
さすがに揺れるが 決して悪い気はしない
いや 程よく揺れてくれなければ
実際列車に乗った意味すらないのだ
ポケット瓶のネックにかぶさっていた
小さな透明プラスティックカップに
ウイスキーを零さぬよう注ぐ
ウイスキー瓶が カッブにカチカチと触れ
そしてカップの中で 琥珀色の液体が揺れる
程よく注がれたそれを目の前にかざし
琥珀色の液体越しに見える
流れる風景に乾杯をした…
不確実ではあるが…
左手には
21世紀の日本の将来を占う単行本
右手には
未来をぼやかし 心まで酔わす液体を手にし…
ボクの頭脳は
これからたどり着くであろう
知らない町の風を見抜こうとしていた…
Little Essay by Yasutomo Honna
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