2009年8月29日土曜日

Little Essay 052「ケータイ一斉メール 」






気になる女性たちにメールをしてみた
少しの遊び心なのだが
宛先以外は 全て同じメッセージ

「今週末…
 夜景の美しいホテルを予約しました…
 夕日が落ちる瞬間の横浜は素敵です。
 ご希望でしたら 
 美味しいシャンパンもご用意します。
 チェックアウトは 翌午前11時です…」 


ボクは いつもの小料理屋のカウンターから
一斉メールを送信してみた
当然:CCなんて間抜けなことはしない


誰から どんな返事が来るのか…
ボクは駄々茶豆を頬張りながら
暫く待ち続けた


「宛先が違うんじゃないの?
 しっかり確認してからメールしなさいよ!!
 バッカじゃないのぉ〜」
Sから早速メールが届いた…
全くの無視 まっこれもよかろう…



続いて
「あ〜ら ご活躍の様子ね…
 何人の女にメール出してるんだか…
 私は別な男と別ホテルで予定あり…じゃねっ!」
Oらしい断り方だ
しかし予定も無いくせに強がってる
反対にOKされても 実は…困るのだが…



「業務連絡…
 今週末は某プロジェクトプレゼンの為
 私的業務には残念ながら一切参加できず…
 成功を祈る… 結果報告されたし…」
まぁ Mならこの答え当然だろうし
何しろ きっとボクのことなど 
酒飲み仲間程しか思っていない 仕事が恋人なのだ




続いて長文メールが届いた
案外 皆真面目にメールを返してくれるものだ…

「よしわかったわ…
 予定入れておくから
 シャンパンはモエシャンドンね…
 部屋は海側をキープすること 
 赤ワインとブルーチーズも必須アイテムだからね
 夜は長いんだから 食料たっぷり宜しくね…
 朝はベットでモーニング
 ねっ…友達も行きたいって言うから 
 連れてっていい?」
Tからだった…
メールは続いていたが
思わずボクはケータイの電源を切りそうになった



酒が三本目に突入した頃 最後のメールが届いた


Aからだった
「あの… 頂いたのは
 私宛の 本気のメールでしょうか…?
 意味が良くわからないのですが
 私は あなたに…誘われているのでしょうか?
 それとも 間違いメールですか?」

うむ これでいいのだ…
男心というものは 
この小さな心の揺れ具合に弱いのだ





元はと言えばボクの遊び心が悪いのだが…
メールを出した彼女たちは…
きっと心のどこかで
「ジョークメール」に気づいている
だから
「Today's Mail  Little Essay…」
とだけ書いて返信をした…



ただし Aからのメールにだけは
「シャンパンは何がご希望ですか?」
と返信をして…
ボクはその場で週末のホテルを予約した


彼女から どんな返信が届くのだろう…
Aからの返信を心待ちにしながら
ボクは四本目の日本酒に突入してしまった…


Little Essay by Yasutomo Honna






 



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