2009年8月24日月曜日

Little Essay 051「紙コップ 」






「コカコーラの紙コップの 再利用法って知ってる?」

彼女は飲み干した紙コップを

眺めながら聞いた


「ゴミ箱にポイッ 使い物にはならないなぁ」

ボクも最後に残った コーラを飲み干した


大学内のグランドに面した

コンクリート広場で

ボクと彼女はクラブ活動の

ラグビーを見ながら喋っていた…



「ふーん あなたはただ

 ゴミ箱に捨てるだけなの?」

彼女はそう聞き返した


「そうさ それとも

 家に持ち帰るとでも言うのかい?」

ボクは彼女の質問に少し疲れてしまった



「ふふっ 最後にもう一仕事してもらうのよ…

 スカッ!と爽やかになる様にね!」

そう言って彼女は

コーラの紙コップを持ちながら立ち上がった




平らなコンクリートに

紙コップを逆さに置くと彼女は言った



「紙コップを逆さにして地面に置く

 そして祈るの 

 <もう一度爽やかにして下さい>ってね


そう言い終わるかと同時に

彼女は紙コップを その白いスニーカーで 

思いっきり踏みつぶした


<スパーーーン>



コーラの紙コップは

まるで風船が割れるかの様に

きれいな音を出して砕けた


ラグビー選手達はその音に

不思議な顔をして振り返った



「ねっ!スカッ!と爽やかでしょ?」

彼女は肩をすぼめ ちょっと舌をだして笑った




ボクは紙コップの 最後の大仕事をじっと見つめ

<可愛そうな奴> と真剣に思ってしまった



Little Essay by Yasutomo Honna




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