2009年7月24日金曜日

Little Essay 00031「その角を曲がると」






久しぶりに あの道を歩いてみた

大きく広く思えていた道が 

何故か…とても狭く思えた


あれから

どれだけの時間が過ぎたのだろうか…



その角を曲がると そう君の家だ



しかし そこにはもう君はいないし

住んでいた家すらないだろう

それだれ時間が流れて行った


当時ボクは その角を曲がった先の風景に

いつも心躍らせていたんだ


君がそこに… いるかも知れない

というたったそれだけの期待なのだが

小さな胸が張り裂けそうだった



その角まで ゆっくりと歩いてみる

わざと時間をかけてみる



遠い記憶の中の 

あの胸の高鳴りを 探してみる…



しかし残念な事に 

それを取り戻すことはできなくなっていた



その角の一歩手前で

ボクは大きく深呼吸をして 

静かに 目を閉じてみた


風鈴の音が聞こえる

遠くに 木々の擦れ合う音が聞こえる

何とも懐かしいシーンが見える




ボクはそのシーンを 

静かに受け止めながら

目を閉じたまましばらく立ち止まり


そして「その角」を曲がらず

今来た道をUターンした



風鈴の音が遠ざかって行く

遠ざかる 様々な音の向こうに

小さく君の顔が見えた気がした



Little Essay by Yasutomo Honna



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