2009年7月5日日曜日

Little Essay 00014 「パンツ3」





久しぶりにパンツの彼女からTELがあった



「ね~ぇ パンツは2倍ではなくて

 4倍もつ事を発見したんだけど 」

そう彼女は言ってケラケラ笑った



「えっ?またパンツの話かい?」

ボクは風呂上がりのビールを楽しみながら答えた



「そう いろいろ考えたんだけど 

 後ろ前 そして裏返したら4倍じゃない!」

彼女は真剣に考えたプランをボクに語った



「なーるほど そりゃ名案だね しかし 」

と言いかけた時に彼女のストップが入った



「でもね 女性は出来るけど 男性はダメネ!」

そう付け加えてケラケラ笑った


ボクも同じ話をしようと思っただけに 

大笑いしてしまった



「で 今日はどうしたんだい?」

ボクは新しいパンツの

後ろ前を間違えない様にはきながら

電話の向こうの彼女に言った



「今? 私は取材で西宮 」



「えっ?西宮?」

ボクはかなりの長距離電話にびっくりした



「そっ ホラ 高校野球の取材よ

 飛び散る汗 球児達の熱いドラマよ

 あなた文科系だから 興味ないでしょ?」

彼女の電話の声の向こうにグラスの氷の音がした



「飲んでるのかい?」

ボクは聞いた



「うん 今日も一日歩いてたら 疲れちゃった

 今ビジネスホテルの窓辺

 ねぇ 西宮にいい店あるんだけど 来ない?」

そう言って再び彼女は笑った



「う~ん キミには逢いたいけれど

 ちょうど今 風呂上がりなんだ

 パンツは新しくて元気なんだけどなぁ

 残念だけど次のチャンスにするよ!」

そう言ってボクも笑った



「残念ねぇ~ じゃ次のチャンスに

そう言った彼女の声が悩ましかった




電話を切った後 ボクはTVをつけた


今日のニュースで

どこどこ高校が 何対何で負けたとか

アナウンサーが 泣きながら球場を去って行く 

高校球児の映像をバックに

単調な声で喋っていた



<4倍もつパンツかぁ~>



裏表 前後に 繰り返し使われる

彼女のパンツを思いながら

何故か その夜のビール 一本多めに飲んでしまった…





Little Essay by Yasutomo Honna

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